[レポート]7/15(日) 大地の再生講座・風の森学び舎〜人が行き交う里山づくり

曇り空・30℃前後、作業に大きな負担がかからない天候に恵まれ、この地域に関わりのある方にも多くご参加いただいて、佐野川 上岩地区での環境整備がスタートしました。

初回は「この土地の歴史や風土を学び、現在の状態を知る」ことを主な目的とし、座学やフィールドワークに割合多めの時間を割くかたちで進行。

現地の見立てと施工方法の講義、実践は、大地の再生 関東甲信越の藤井さんに行っていただきました。

座学中の風景

上岩集会所を使わせていただき、まずは自己紹介。

その後に座学。

ナラ枯れが起きる仕組みを大地の再生視点で見立てた資料をもとに「(大地の再生が)どのような視点で環境整備を行なっているか」を学びました。

この風の森学び舎では、地表と地下の水と空気の循環を人の手で改善していく手法として大地の再生を取り入れていますが、「これが正しく、これで問題が解消する」と、強引に推し進めることは行いません。

「その風土にあった場作り、活動作りを行い、地域の中で継続していく(根付いていく)」ことを目的とし、それを実現していくための手段として、活かせるものを活かすようにしていきたいと思います。

目次

フィールドワーク

藪で覆われた箇所(この下に沢があります)

座学のあとは周辺を歩き、場の状況を観察していきました。

薮化している場所は、空気と水が滞り、その中で草木が必要以上に生きようとしています。

詰まりやすい場所は、樹の幹にカビが生えていたり、葉が腐っていたりしているので、視覚での判断が可能。

これらの詰まりを取り除く(開く)と、水と空気が動き始めて、場が改善していきます。

「詰まりやすいところこそが、改善していけるところ(藤井さん)」になります。

地表と地下はミラーのようになっており、地表面を見て、地中の状態を探ることが可能。

例えば、地表面の風通しを改善すると、それに連動して地中の空気と水が動き始め、場の改善が進んでいくようです。

ここ↑は県道脇の歩道。

伸びていた枝木を地元の人たちが払われたようですが、払った枝木により、歩道から下の沢へと流れ込む風が遮断されています。

常に水と空気の流れを意識していくことが、その場所の藪化を抑えるポイント。

私たちは日常、藪払いや草刈りなどで伐採したあと、それらを置く場所まで意識をしていないため、

藪を払った→払った枝木を(風の通りを考えずに)置く→枝木を置いた場所が(空気が詰まって)藪化する

というループが発生します。

対処策としては、何か所かに分けて「ボサ置き」。

満遍なく置くのではなく、所々に空気を通せる場所を作ってあげると良いとのことです。

ちなみにこの場所↑は、下に沢があり、この沢自体に詰まりが生じています。

水と風は連動しているので、水の停滞が風の停滞を生み、蚊が多い、暗い、葉が枯れる、幹に苔が生えるといった薮化の進行を招いているようです。

この場所に対しては、道路脇の草を払い、沢まで風が降りていく風の通り道を作り、風通しの改善を行いました。

砂防壁・境川に風を通す

砂防壁に覆い被さる藪

こちらは、境川にかかる砂防壁。

川の勢いや土砂の流れを抑え止めるために砂防壁が設置されたようですが、この大きなコンクリートが地下水脈を止めてしまっています。

水が停滞して草が繁茂し、沢筋が見えない程に薮化していました。

この薮を払い、沢筋に沿って風が流れる状態を作ります。

沢に降りてみると、竹が至るところに繁茂。

竹はストロー状の植物で、地下の水を地上へ送る役割があります。

これだけ生えている=地下に水が溜まり詰まっでいるということになります。

青竹はそのまま残し、枯竹を取り除いて全体的に風が通るようにしていきました。

藪を払ったあと、沢筋が見えるようになりました。

なお、このように薮祓いして出た竹や枝木は、炭焼きで炭にして地中に戻すことで、ゴミを出さずに循環させることが可能。

その場所にとっては、そこにあった材を循環させることが最も効果的です。

砂防壁=水と風の出口を開いて、風が通るようになりました。

砂防壁の周りにも、水と空気を動かす処置として点穴を入れました。

長年の堆積物で壁の部分に詰まりが生じており、水が壁周辺に散らばり全体に滲むような状態になっていると思われます。

ここに点穴を開けていきました。

点穴は、水が渦を巻くところにいくつも入れるのがポイント。

その点の集合が蛇行した川の流れのようになること。

自然の地形に倣って作って行くことで、治水機能が設けられていきます。

この点穴を設けないと、大雨のたびに地表面を水が滑っていき、勢いのついた水が周辺を破壊していくのみ。

大雨のたびに擁壁沿いに水が走り、擁壁の途切れた土の部分にあたって側面を抉り続けています。

縦に水を浸透させていく機能(点穴)を上流に向けて設けていくことで、地上と地下の水脈が点と点で繋がっていきます。

大きく深い穴ではなく、浅めに分散させていくことが必要。

ひとつの大きな穴にすると、そこに全ての水を引っ張ってしまうため、治水機能が成り立ちません。

点穴は、移植ゴテで開ける程度の大きさでもOK。

わずかな隙間でも、そこから空気と水が入っていくので土が緩んでいき、水の通り道も改善していきます。

また、点穴のために掘り上げた土や石を置く場所も重要です。

空気と水を止めないよう、分散させて行くことを意識しないと、この掘り上げたものが新たな藪を作る要因となってしまいます。

昼休憩と歴史講座

ここまでの作業を終えて昼食です。

この地域で採れた野菜と猪の肉を使わせていただいたカレーライス、鹿肉のソテーをご馳走になりました。

法政大学の学生と佐野川地域おこしの会が共同開発している『水出し佐野川茶』は、すっきりとした中に適度な渋みがあり、作業後のカラダに染み渡りました。

昼食後は『歴史文化を学ぶ』時間。

石楯尾(いわたてお)神社の歴史や言い伝え、七奇石、陣馬街道と武田軍・織田軍の関わりなどをスライドとともにご説明いただきました。

午後の作業に入る前、実際に石楯尾神社へ。

神社周辺にある七奇石にも触れ、この土地が長年に渡り大切にされてきたことを体感。

これからこの地域で行う『里山環境整備』を、それぞれが「何のためにやるのか」を考える時間になりました。

風の草刈り

風の草刈りをやる前の状態

午後の作業は、風の草刈り。

初めての方が多かったため「手感触でまずやってみる」ことを目的に、10分ほど実施。

作業後はこちら↓

風の草刈り(作業時間10分)を行なったあと

風の草刈りは「まず草刈り鎌でやってみる」ことをお勧め。

ひとつの薮を風の草刈りで払う際に、どれくらいの力が必要なのかがわかるためです。

これをやらずに、最初から草刈機で大きな力を使って藪を払っても、

力で押さえつける格好なので、継続性がなく、藪化を抑えることができないとのこと。

できるだけ強く大きな力を使わずに、細かく小さな時間で、楽な力で続けて行くことが自然の流れ。

「風の通りの心地よさを、人が忘れている。小さな作業で、風の通りをよくすること。これを地域で続けていってほしいと思います(藤井さん)」

ただ、風の草刈りは、これまで一生懸命草を刈ってきた地域の人たちの理解は得にくいもの。

まず私たちで、草の根を生かす草刈りを続けていき、実際に変化を起こすこと。

少しずつ自分たちが行いながら、周囲の人たちへの理解や協力を得て、広げていきたいと思います。

本日の講座、最後の作業は、コンクリート擁壁の際に点穴を開け、通気通水浸透の改善。

この部分の空気と水の詰まりも改善するため、草の生え方も今までよりは落ち着くと思われます。

点穴は枝木で支え、穴の周辺も葉っぱなどでグランドカバー。

できるだけ周囲の環境・風景に馴染むように仕上げました。

今後、草刈りを行なったときに点穴の枝木を草刈機で巻き込まないよう、目印のために高めの棒を立ててあります。

まとめ

本日の作業はこれで終了。

地域の歴史を知ることで「なぜこの場所に、この作業(手入れ)が必要なのか」を考える機会が生まれ、ひとつひとつの作業により深い意味を感じることのできた講座となりました。

大地の再生を用いていますが、これが全てを解消するものではなく。

地域の人たちが今まで取り組んできた方法も事実であり、真実です。

なので、新しい考え方や手法に対して、懐疑的になるのは必然だと思います。

否定や強制ではなく、その場にあったものを考え、良いものを取り入れていくこと。

「この地域の里山環境を未来へつなぐこと」が目的であることを忘れずに、この目的を果たすために、地域の人たちと作業を通して対話を繰り返し、良い協働のかたちを作っていければと思っています。

佐野川地区での次回は作業DAY、9月上旬頃を予定しています。

内容決まり次第、WEBやSNSでお知らせします。

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