藤野まちづくり会議環境部会にて、本年度(2024年)の取り組み事項とした沢井川の環境整備を行いました。
場所は、自然体験やませみから上流の部分です。
栃谷川との合流点から上流にかけて、人の背丈以上の草が伸び、夏のあいだ鬱蒼とした状態が毎年続いていました。
やませみでバスを下車し陣馬山へ向かうハイカーさんが多くおり、景観がよろしくない状況です。
これまで何年にも渡って地元の方々が草刈りをされたり、大雨により増水した川で薙ぎ倒された草が、そのままその場所で堆積し続けたことで河原が高くなり、川は低いところに集中して流れ込み続けたことで、広い川幅を活かせない細くまっすぐな水の流れができてしまっています。
本来の河川は水の渦流により蛇行したかたちとなり、蛇行することで水の速度を緩め、滞留させながら地中へ浸透し、浸透しきらなかった水が下流へと流れていきます。
増水したときは、蛇行していることで水の勢いが抑えられ、地中への浸透を行いながら水量も抑えていく機能を発揮します。
今回の作業箇所は直線になっているところが多いので、今後、大雨で増水すると水を加速させ、周辺を削って(破壊して)いってしまうと思われます。
今回の整備にて、景観の改善に加えて、直線的な流れを蛇行曲線に変え、川の機能を回復させるきっかけ作りも実現したいと思います。
整備の対象エリアは下図の通りです。
ここから上流は定期的な手入れが行われていないようで、人の背丈以上の草が繁茂しています。
地域と行政の方、一般参加の方、総勢20名前後の人にお集まりいただいたので、刈払い機のチームと手作業のチームに分かれて作業を開始しました。
刈払い機チームは、栃谷からの川と合流するエリアを担当。
多くの登山者が通過する場所のため、河原一帯を地際刈りで整備。
1.5時間ほどで河原一体が平らな感じになりました。
手作業チームは、刈払いエリアよりさらに上流を担当。
まずは刈払い機を用いて、人が1人通れる幅で筋道を作り、その筋道から川へ向けて何本も筋を通していきます。
草の勢いが強く背丈が高いので、ノコギリ鎌では力と時間ばかり費やしてしまい、手作業の持続性が担保できません。
そこで、草を手でまとめ、渦を巻きながら倒す方法を採用。
台風が草木を巻き込み倒していくようなイメージでやることで、草にとってはより自然な倒され方になるのでは?と考えました(自然に倒される→植物の反発が抑えられるという仮説)。
こうして何本も筋を通していくと、地表部の状態が見えるようになり、所々に水が通っている(沸いている、流れている)ことがわかりました。
この水が下流に向けて流れていくように、流れを詰めている箇所の草を取り除き、小さな川の流れを作ります。
水の入り口と出口が繋がりました。
このようにして水の流れを作る(水脈を入れる)と、これに周辺の水が誘引され、滞留・分散していた地下の水脈がつながり始めます。
水脈が動き始めると、地上部の風も水脈に沿って動き始め、この水と風の流れが場の状態を改善していくようになります。
もともと生えていた草はすべて刈ったり倒したりせず、塊を残しておくことも、その場を安定させる上で大切です。
この塊が風を適度に受け止めて緩め、その場全体に風が強く当たり乾燥し過ぎることを抑えてくれます。
また、この塊の部分において、植物が地上と地下の空気と水の行き来を生み出してくれています(地際で刈り込んだ場合、刈り倒された草がそのまま地上部を覆うので、地上と地下の水と空気の出入りが塞がれてしまいます。
この草の塊を設けることで、柔らかい風が流れ、地中の水と空気が循環して穏やかな植生となりますが、風が強すぎたり空気の循環が悪いと、負荷の高い環境で育つ強い植物が増える。
風と植物にはこのような関係性が存在します。
今回の作業では、参加者へ風と草の関連性を事前に十分に伝達することができなかったため、筋をいくつも通したあと、塊になっていた部分もノコギリ鎌で刈り込んでしまいました。
水と空気の流れの視点で上記に書かせていただきましたが、この仮説がどこまでこの場に合っているのかは、今後の状態変化を見ないとわかりません。
今秋にもう一度同じ場所を整備するので、その時に各場所がどんな状態になったのかを確認、検証したいと思います。
蒸し暑い中、作業は15時頃にすべて終了。
作業にご参加いただいた藤野まちづくり会議環境部会の皆さま、沢井自治会の皆さま、一般参加の皆さま、1日大変お疲れさまでした。
そして、ありがとうございました。
秋の作業もよろしくお願いいたします。
ちなみに、刈払い機で地際を刈り込む方法について、少し触れておきたいと思います。
地際刈りは、刈払い機のチップソーを数センチ浮かせた状態で維持し、横にスイングさせながら、河原全面を刈り込んでいきます。
刈払い機を支えて、この体制を維持して作業することは、力や体力、持続力が求められます。
そして、対象範囲が広ければ広いほど、刈り込む時間と労力がかかります。
今より以前、生産人口の多い頃は人手が多く確保できたため、マンパワーでクリアできていたのかもしれません。
では、これからの10年、20年を見た時に、現在の20-40代の人たちで、同じパワーをかけて整備をしていけるのかというと、マンパワー不足が明らか。
少ない人手と限られた時間で、いかに効率的かつ効果的に、そして自然に良いかたちで整備をしていけるのか?
この沢井川の活動を通して、今後の持続的な整備方法を見出していければと思います。
最後に…
今回の作業は予定よりも長い距離を整備することができました。
このコンクリート擁壁のある場所までです。
前日までの雨による増水もありますが、コンクリートで水が一箇所に集められ、滝のように流れ落ちていました。
増水時の緩衝、流木を止めるために作られたと思われ、段差をつけて流していますが、格段の傾斜がきついため、水に勢いをつけてしまい周辺を削り取るようになっています。
恐らく、この擁壁を作った時は、これほどの水量がここに流れ込むことはなかったのかもしれません。
当時と比べて山全体の保水力が落ち、雨量の多い雨が降ると途端に増水してしまうので、今の状態に見合った擁壁のかたちになっていないように思われます。
コンクリートは便利なので今後も様々なところで利用されていくものですが、このコンクリートで地上を固めることで、地表部に備わっていた空気と水を通す機能(治水機能)を潰してしまいます。
できるだけ治水機能を壊さずに、できるだけ治水機能を再生させるにはどうするのか?
今後、生産人口が減る中、これからの世代が自然環境を維持し、育てていくにはどうすればよいのか?
「大きな労力(負担)をかけず」に「水と空気の流れを活かした処置をする」
これが、解決策のヒントになりそうです。