ふじのマレットゴルフ場(神奈川県相模原市緑区)の環境整備を2022年9月に開始し、半年が経過しました。
大地の再生講座は今回が3回目となります。
>>これまでの講座、作業レポートはこちらからご覧いただけます
今回の講座メニューは以下の通り。
- 高木の根回りの通気浸透
- 表層水脈
- ゴルフコースの土留め
- 春の風の草刈り、風の剪定
最初の1時間ほど、座学で『大地の再生の視点や施工方法、施工事例』を学んだあと、作業を進めていきました。
高木の根回りの通気浸透
まずはゴルフ場の一番高い場所、水の入り口となっているところに生えている多くの高木に対して、通気浸透を改善するための点穴や水脈を施しました。
これらの高木たち、見た目は大きく育っているように見えますが、根の周りは人の往来で踏み固められており、
「高木が根を張る大地の状態(元環境)が悪いので弱っている(講師の藤井さん)」状況。
例えば椿は、樹の表皮が乾いてしまっていました。
本来、椿は脂が多く、それで外的から身を守っていますが、それができておらず。
葉も黄色くなっています。
この樹の周りに小さな穴を移植ゴテであけると、そこに生えている草の根に空気と水がいくきっかけができます。
これにより下草が元気になると、土中の菌糸や中高木に波及していくようです。
『表層5センチ』
ほんのわずかに感じますが、この5センチが自然にとってはとても大事とのこと。
この辺り一体に、ダブルスコップや剣スコップを使った点穴と、移植ゴテを用いた小さな点穴を入れました。
点穴には枝木を入れて、土圧で崩れないような支えにします。
掘り起こされた土は手を使って、点穴の周囲に慣らしていきます。
慣らした土も、そのままにしておくとすぐに乾き、点穴の中に崩れて埋めてしまいます。
これを防ぐために、枝と葉を鳥の巣のように絡めて周囲を覆いました。
その場所の自然地形に見合ったかたちで仕上げていくことがポイントとのこと。
点穴と並行して水脈も作り込み。
仕上がりがこちらです。
ゴルフコースの土留め
次に行ったのは、昨年(2022年)9月から12月にかけて土留め階段を施工した場所の状態チェックと、土留め作りです。
この階段ができてから、雨が降っても階段に水が留まり浸透していくようになりました。
管理人さんが雨の日に様子を見に行っていたようです。
水と空気の通りが改善されたため、コースとその斜面に草が生えてきました。
「ここに草が生えるなんて、今までなかったこと(管理人さん談)」
改善の効果を認識できた瞬間でした。
その後、このコースの斜面に土留めを追加。
土留めの杭のまわりに植栽をすることで、植物の力を借りて通気浸透を促進できるとのこと。
斜面の上の段から植栽になりそうな草を剣スコップでくり抜いて、杭の周りに植え付けて行きました。
くり抜いたところには炭と枝木を入れれば点穴になり、この場所の空気と水の通りがさらに改善できます。
このような仕上がりになりました。
隣のホールに、水の詰まりから支えが崩れ始めているところがあります。
ここは今後、土留めを作り替える予定です。
春の風の草刈り
春になり、至るところで新芽が生え始めています。
夏に向けてこの新芽を削ぐように草刈りをしておくと、夏の生え方が違ってくるようです。
ゴルフ場のような表面積の広い草刈りは、地形の落差をみて、低くなっているところを刈っていくのがポイント。
人が歩いているところなど、地形の下がっているところに風が強く走ります。
そこは植生が薄くなるので、薄くなっているところを見ながら、風に倣った削ぎ方をイメージすると良いとのことです。
風の剪定
昨年(2022年12月)の講座で水脈を入れた坂道ですが、ここも草が生え始め、雨が降っても滑ることがなくなりました。
>>2022年12月の講座はこちらをご覧ください
講座の後にウッドチップを撒きましたが、そのウッドチップが坂の下の方へ流れ落ちることもなく。
地面が呼吸をしているため、ウッドチップが斜面地でもちゃんと吸着しています。
また、水脈の効果で、両側の植栽も例年以上に新芽が出てきました。
良いことですが、新芽が生えすぎて空気の通りが悪くなっているため、これらのメンテナンスを実施。
表層の手入れとして、草刈りと剪定を行い、地中の手入れとして水脈整備をすることで、地下水脈がつながってきます。
水や空気の詰まりがなく、下草の根が荒れなければ、高木も荒れないという関連性があり、樹形は自然地形に収まってくるようです。
水脈のまわりの下草を処理し、根回りの地面の通り道を作ることで、水脈の効果が続くようになります。
この処理をするときのポイントは「目通しが軽く効く感じ」で止めること。
やりすぎる(開きすぎる)と風の通りが良くなりすぎて、乾燥してしまいます。
刈り込みすぎると、後進の枝が出てこなくなり…
その、刈り込みすぎた結果がこちらです。
このようにならないよう「やりすぎず、自分のやりたい量の半分程度」で止めるのがポイントです。
仕上がりがこちら。
作業中、
「植栽を丸く整えているのをよく見ますが、形を整えることも意識していますか?」
と、参加者さんから質問あり。
これについて、大地の再生士 奈良さんに答えていただきました。
阻害しているのは太い枝。年数のいった枝を若い枝に換えていきます。
大きいのがなくなることで、全体に光と風が通りやすくなります。
樹形も、丸く形を整えるのではなく、風通しをよくするという視点。
(芽や枝を)削いでいく過程で、自然と丸くなっていけばよしという考え方です。
常に自然目線。
空気と水の流れ、循環の視点で取り組むことが大事であることを学びました。
今後の作業について
本日の講座はこれで終了。
次回の講座は夏頃の開催を予定しています。
それまでのあいだは、週末に作業日を設けてメンテナンスや処置を進めていきます。
藤井さんから「今後の作業ポイント」としていただいたのは以下の通りです。
- 土留め階段、淵にマイナスドライバーで溝あけて炭入れ
- 土留め階段の杭のところに植栽入れ込み
- 事務所裏の斜面一体にこびとの土留め
- 西側、トイレの樹木周りに点穴、水脈
- 西側、幼稚園側の斜面に土留め、落ち葉取り(土を出す)
- 高木まわりの移植ゴテ点穴
- 植栽の剪定(駐車場)
まだまだたくさんやることあり。汗
できるだけ多くの人に関わっていたたきながら、より良い場所にしていければと思います。